Loading...
アイコン

留美子

チャンネル登録者数 4570人

1万 回視聴 ・ 147いいね ・ 2018/09/11

何の屈託もない集いのごとく、南の基地に明るく響く歌声、笑い声。陸軍特別攻撃隊勤皇飛行隊、最前線へ向かわんとして、山本卓美隊長を中心に、送られる人、送る人。ともに手を打って、楽しみさざめく基地の一時であった。この、若武者たちの目指すは轟沈。乙女が愛国の血をもって描いた日の丸の鉢巻きを固く締め、今、勤皇の勇士たちが目指すは轟沈。爆弾に羽をつけ、敵艦と差し違える決意を、山本隊長は尾翼に描かせた。
 基地の人々の深い祈りを受けて、再び帰らぬ神々は前線基地へ出で立っていく。12月7日払暁。神鷲たちがひたすら待った出撃の時は来た。大きな獲物、敵護送船団はレイテ湾に遊弋(ゆうよく)している。隊長、山本中尉をはじめ、隊員一同の顔には必殺の気迫がみなぎりわたった。飛行服に身を固める若鷲、二瓶少尉。隊長も愛機、屠龍の上に出撃の準備を終わった。打ち振る日章旗の波に送られて、勤皇隊は空高く舞い上がる。ああ、誉れも高し勤皇隊。戦艦1隻、輸送船3隻轟沈の大戦果は挙げられた。

「体当たり機は大変よくやって、立派な成果を収めた。身命を国家に捧げて、よくもやってくれた。」
こういうお言葉をいただきました。第一線にお伝えをし、そのご家族にお伝えをしました。この機会にお伝えをしておきます。終わり。>

<遠藤中尉:
 一同を代表いたしまして、ご挨拶申し上げます。甚だご懇篤なる訓辞を賜り、ただただ、感激のほかありません。遠藤以下、誓ってこの重任を完遂いたします。>

敵艦船に弾と砕けて国を守らん。陸軍特別攻撃隊護国隊。
遠藤中尉以下、内地基地進発の時至る。
かしこき辺りの思し召し、栄えの門出にありがたさ極まりなく、また忝(かたじけ)なくもご訓辞とお見送りを東久邇防衛総司令官の宮殿下より賜り、勇士の感激はいや増すばかり。今、勇士たちは祖国の土を離れていく。はるかに霊峰富士を仰ぎ。

 12月7日、往きて再び帰ることなき神鷲に、比島方面陸軍航空部隊指揮官、富永中将は、拝命、護国の二字も鮮やかな鉢巻きを送った。その鉢巻きを固く締め、寄せ書きに決意を残し、進発の時近く、ただ必死必殺の策を練る、若武者たちであった。若き神鷲、遠藤隊長、愛機の上で端然と右手を挙げて、整備の労を謝す。整備員と交わす最後の挨拶であった。護国の翼、今ぞレイテの決戦場へ。
敵艦船轟沈へ。神鷲は敵の頭上へ殺到していく。

散るや散る、潔く散る祖国の花、桜にも似て、清く猛く散るを願う勇士たち。ああ、名付けてその名も万朶隊。その勇士の手をしっかり2つの手で握りしめる人。陸軍航空部隊指揮官、富永中将。
祖国の民一億の、地に臥して捧げる感謝の心が、その2つの手にはこもっている。
出撃を前にして空中戦に、無限の恨みを飲んだ岩本隊長以下の、弔い合戦の時は、まさに数刻の後に訪れんとしている。11月12日、田中曹長以下4隊員は、敵戦艦、輸送船、各1隻を撃沈して、レイテ湾に散っていった。
 11月13日、我が荒鷲の基地に敵P-40が襲ってきた。我が方、これと壮烈な空中戦を展開。
P-40、撃墜。
この日、敵機の空襲にもゆるがず、静かに上官、僚友と卓を囲んで語る一隊があった。この一隊こそは、陸軍特別攻撃隊富嶽隊。既に攻撃の命は下っていたのである。
隊長西尾少佐をはじめ、全隊員、粛然として上官より別れの言葉を聞く。
敵機動部隊、攻撃の時はよし。勲しは霊峰富士のごとく高く、進発の時はよし。一機、また一機。茜さす比島の空に、銀翼を輝かして飛び出して行く。
富嶽隊西尾隊長機、最後の通信は、ただ次の一語であったという。「突撃」。

コメント

コメントを取得中...

コントロール
設定

使用したサーバー: direct